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「つまんないの。ま、いいや。味は良かったし。じゃあね」
ウタカタの爪が竜の喉元を深く切り裂き、竜は呆気なく絶命した。
竜が動かなくなったのでウタカタは彼を組み敷くのをやめ、楽な体勢になった。手にした足を貪り、それが終わると次にもう一方の足、腹、臓物と次々に食い進めていった。
あっという間に肉は食い終わり、骨を噛み砕き、髄をすすった。「残さず食べる」ことは彼なりの美学でもあった。最終的にそこには赤黒い血だまりとバラバラになった竜の骨が残った。空腹を満たし、満足した彼であったが、付近で物音があったことに気づく。
ゆっくりと起き上がり、物音があった方を睨むとガサガサと音を立て、茂みからその正体が自ら現れた。
「へっ、バレちまったか。まァ、大した問題じゃねェ」
舌なめずりしながら現れたのは獣人の一種だった。獣人には興味が無いため詳しい種など当然わからなかったが、汚らしい灰色の毛皮で、大きな三角の耳を持ち、ウタカタを挑発するようにニタニタと笑みを浮かべていた。
右手には使い込まれているがよく手入れされたサーベルを持っている。その獣人は自信ありげな態度から手練れであったのかもしれないが、食後のひと時を邪魔されたウタカタはあいにく機嫌が悪かった。
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