2.木曜日

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「セイヤ?」 愛車をかっ飛ばし自宅に帰ってみたものの、留守だった。 実は家でゲームでもしてんじゃないかと思ってたのに、どこに消えた?本気で心配になってきた。電話だ、電話! 「もしもし!セイヤ?今どこ!」 「あ…」 応答してくれるのかなと思ってた。繋がってまずは一息。ため息と違うから。 はーー。心配したんだからー、という私の気持ちを電話は伝えてくれるだろうか。 「学校サボったのね?アキラ…お父さんに電話なんかさせて」 「いや、自分でかけた」 え?マジで「片山セイヤの父です」とか言ったわけ?シャーシャーと!だんだん腹たってきたんですけど! 「どこなの、まさかゲーセン」 「いや、穂波川の河川敷」 川?そんな自然豊かな場所で、男子高校生がいったい何を! 「すぐ家に帰って来なさい!」 見事に父親になりすました16歳。 サボりなんて今までこんな事、セイヤに限ってあり得なかった。大事件だ。ひっ捕まえて引っ張ってすぐに学校に連れて行かなきゃ! なのに飄々と帰って来たセイヤの手には、スーパーの白いレジ袋。中にリンゴが二つ入っていて、 「何よ、これ。」 「食べる?昼寝してたら知らないおじいさんが、持っていきなさいって。」 本人は至って呑気なことやってくれてる。 そのあと親子共々担任と学年主任と生活指導部の先生に囲まれて、こんこんと説教される羽目になったのは当然の流れで、バリキャリだって、とほほだよ。 「セイヤー?リンゴむいたよー?」 「いらね」 たった一人の人間が何を考えているのか読めないんだもん。先生の問いかけには素直に答えてたくせに、母子の会話はさっぱりだなんて。 これが成長に必要な反抗期だとしてもさ、 何やってんだろ、私 と肩を落とした。
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