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とある休日。私はセイヤのバイト代でランチをご馳走してもらっている。
女子受けのする小洒落たパスタ屋なんて、誰に聞いたの。誰かと来たの?
なーんて、
ふふふ…何でも知りたがるとね、そりゃ嫌われる。詮索はやめよう。
あのときのセイヤの大泣きは、
おっぱいでもオムツでもねんねでもなく…
きっと不安な私の代わりに大声で泣いてくれてた
「…んだよね?」
「は?何がだよ、どさくさに紛れてオレの食うな。」
「いいじゃん、味見。」
私に盗られまいと焦ったセイヤは、パスタ麺を大きくフォークに巻きつけた。
いったいどうやってその巨大グルグルパスタを口に押し込むつもりなんだろう。
じーっと観察してると、見事に一口に納まった。
ほー。驚いた。
あいも変わらず素っ気ない息子を前にして、あの頃辛かったけど投げ出さなくて良かったと思う。
「あ」
「なーに。まだ口の中に入ってるのに。急にどうしたの。」
「この曲、前お母さんの車でよくかかってた。」
有線チャンネルは昼下がりのおしゃれ洋楽オムニバス。
「いつの間に覚えてたの。イントロだけで分かるなんて。」
もぐもぐ…
言いたい言葉だけ残して食べることに集中する。
まあ、これもまた健全な男子の証拠かな。
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