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浮かぶ
目が覚めると、海に浮かんでいた。
世界は水浸しで、僕はそこにぷかぷかと浮かんでいた。
体が冷たいので、とりあえず浮かんでいた四角い何かによじ登る。
思ったよりも簡単に乗っかることができた。
バランスを取るのも難しくない。
慣れれば存外に快適かもしれない。
そう言えば嫁さんはどうしたろう。
海の中を覗き込んでみると、玄関先で笑っている嫁さんがいた。
その隣には僕ではない何か塊があった。
嫁さんの目にはあれが僕に見えているのか。
あるいは、僕が浮いているのを良い事に、望んでいた何かを手に入れたのか。
随分苦労して口説いたが、所詮は人種が違ったと言う事か。
あれほど執着していた嫁さんに、今は何の興味も湧かなかった。
浮かんでいた細長いモノをオールにして、僕は進むことにした。
どちらに進むか。
そんなこと知ったことか。
思い切って水をかいたら、思った以上に易々と進んだ、
悩み過ぎていたのだ。
簡単な事に気付くのにどれほどかかったろう。
青い鳥とは真実の極意である。
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