5 破壊的なイノベーション

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 俺は理系女子に古典的な表現力で圧倒的な差をつけられてしまった。  さすが、わが社の製品と言わざるを得ない。(余談になるが、人工知能の見分け方は実に簡単で、知識量を試す会話には必ず乗ってくる。今回は「古典的な表現」に反応した。)  専門家チームは他部門を経由せずに俺にエム氏を調べさせたいのだろうか?タテ割組織の会社ではよくあるやり方だ。  なぜ、エム氏はエガオ爽やかなのか?  ストレス・マキシマイザーの電池切れの可能性、いや、イジメのプロ集団がそんな初歩的なミスはしない。事前の動作確認は基本手順のはずだ。  そうか、エム氏が人工知能であれば脳に海馬が無いからストレス・マキシマイザーは効かない。でも、それこそ人工知能の感情を開発している我々プロ集団が見逃すはずは無いのだが… 最新型の極秘評価か?  もしエム氏が人工知能なら毎朝の法定外ストレスチェックで異常値が記録されるはずだ。その記録を書き換えられる者、それは会社だ。  そうか、会社はイジメチームを標的に新手のイジメに着手したのか。  その手段は、「エガオ爽やかはストレッサーを駆逐する」という原理だ、これはわが業界にとって破壊的なイノベーションだ。  いづれにしても、既に異常なシミュレーションが始まっているのだろう。  やはり結論を出すには、本人に会ってこの目で直接確かめてみる他は無いようだ。
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