2 突入

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 カネと権力に群がるイヌども、俺が制圧してやる! 腰のホルスターがズシリと重い。  まだ早朝なので警備員はいない。ヨシ、突入! クリア。ゴゥ、ゴォ、ゴーッ! 一気に二重の自動扉を駆け抜けると、消灯されたうす暗いエントランスは静まり返っている。  ワナか、省エネなのか?  ピーィ!  オーマイガーッ、アラートが出やがった。  「メガネ ヲ 外シテクダサイ.」  合成音声だった、天井には監視カメラと動体センサーの赤い点滅。  チッ! 渋々メガネを外して虹彩をさらす俺。  「個人 ヲ 特定シマシタ,所持品オヨビ法定ストレスチェック ハ クリアデス.」  ふぅ、携帯電話用ホルスターの持ち込みは禁止されていない。  出勤前のモチベーションをアップする、俺流のメソッド完了。  オフィスの様子が妙な具合だった。皆うつむいて挨拶も返さない、イヤな空気。  誰だよー! ストコン(ストレス・コンディショナー)をいじったのは。設定を規定値に戻すと、皆は超だるそうに早朝会議の準備を始めた。  やれやれ。俺は上着を隣の椅子に掛けると、法定外ストレスチェックを開始した。センサー群モニターシステムを起動、ひとりずつのバイオ情報やカオの表情をキャプチャーする。これも俺に託された任務だ。  ただし、体調の悪いスタッフを産業医に引き渡すのが目的ではない。
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