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『「何もいらない……もう、何もいらない…… お前がいればいい」 大輔は千鳥を抱き締め耳元で呟く。 『だ……い、すけ……』 大粒の涙を流し、千鳥は震える両手をゆっくりと大輔の背に回し、そこにある広く逞しい温もりを確かめるように指先で触れ、力を込めた。 欲しくて堪らなかった言葉が、温もりが全身を包み込んだ。 「千鳥……好きだ」 2人の思いがやっと通じた───』 「……ふっ……うっ、ううぅっ……」 「匠、キモい」 ぷるぷると震える俺の前で親友・竹本聖(たけもと・ひじり)が冷めた視線を向けてくる。 「だってさぁ~……」 俺、刈谷匠(かりや・たくみ)は片手に持つスマホから顔を上げ、窓際に背を着け顰めっ面の聖を見た。 潤ませる目を大袈裟に押さえて抗議のセリフを述べるべく、机の上に身を乗り出す。 「この話し、泣けるんだよ!やっと千鳥(ちどり)と大輔(だいすけ)が両思いで触れ合えたんだよ! 嬉しくねぇ?」 「嬉しくねぇ」 興奮冷めやらぬ俺の言葉とは裏腹に、聖は自分の手元で弄っているスマホに視線を戻して素っ気なく返してくる。 「バッカ、お前読んでみろって!ぜってぇ面白いから!」
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