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海の香水
本降りになってきた。
雨はだんだん激しさをまして、雨に傘が役にたたなくなってきた。さらに、もっとひどい雨になると予告するかのように、重くのしかかった空から、時折雷の音が走っている。
……ついていない。サキは毒づきながら足早にシャッター街を駆け抜ける。
裏通りのさらに裏通りで外回りしていたために、地図アプリを見ても、今自分がどこを歩き、どこへ向かえばいいのかすらわらなくなっていた。
――ともかく、雨宿りできる所に入ろう。
サキは視線を巡らせると、ちょうどウェルカムボードが見えた。
これで開いていたらいいけど……
サキは小走りに建物に向かった。窓から灯りが漏れている。開いているみたい。どんな店なのかわからないまま、ドアを開け店内に滑り込んだ。
甲高い金属の音が鳴り響き、何かに集中していた店員が顔をあげた。
「おやおや、ひどい雨にやられたようだね」
「すみません、しばらく雨宿りをさせてください」
「困ったときはお互い様。そこに座って落ち着くのを待つといい」
脱色した髪の毛のせいで若く見えるけれど、おそらく自分よりも一回り程上の方だろう。サキはすすめられた席の方に移動し、店内を見渡した。
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