地球33番地で

2/15
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
☆.:*:・'°☆.:*:・'°☆.:*:・'°☆.:*:・'°☆  私が通う歯科は、地球33番地通りといつからか名付けられた場所の真ん前にある 。33番地通りというくらいだから、いっそ耳鼻科があれば語呂も良いのにと思うけれど、あいにくここいらには存在しない。 何故地球33番地通りと命名されたかというと、その場所の東経と緯度の数字の中に3という数字が12並んでいて、世界的に見て珍しい場所だからということだったらしい。 命名当時の基準計測上で、陸地で気軽に訪れることが出来るゾロ目のユニークな場所としては、此処だけだと謳われていた。世界で9箇所程そんな場所があるらしい。けれど、大抵は川の中だとかで人が簡単に足を踏み入れる場所ではなかったようだ。 基準計測が日本のものから世界基準のものに変わった現在では、当初認定された場所からは445メートル程離れた場所の川の中が、正式なゾロ目の場所と変わってしまっている。つまり陸地ではなくなったという訳だ。 一応目視でそのゾロ目の場所が気軽に見られる訳だから、ラッキーと思えばそうなのかもしれない。けれどそんな少し風変わりというか、何か幸運なことにあやかれそうなありがたい場所と言うべきなのか。 その割と広くて緩やかに流れる川の開放的な景色を目の前にしながらであるにも関わらず、私の心は大いに曇っていた。 春の芽吹きの季節とやらは、どうやら身体のあちこちに変調をきたす季節でもあるらしい。この時期になると、どういう訳かここ数年、左の奥歯の親知らずが炎症をおこして疼き始めるのだ。 お洒落なデザインの歯科の駐輪場に自転車を停めて、親知らずの腫れている歯茎の部分を舌で確認しつつ、建物内へと重い足どりで進む。受付を済ませてから診察台へと案内され、歯科衛生士の若くて可愛いお姉さんから歯磨きのレクチャーを受け、その後で先生の診察を受ける。 言われた通りに奥歯磨き用の歯ブラシも常備してあるし、教わった通りに磨いてもいる。それなのに、どうしてなんだかこの季節になると同じ件でやってくる患者の私に先生が笑う。 「川田さん。親知らず抜きたいなら、いつでも大きい病院に紹介状書いてあげるから」 「その覚悟があるなら、とっくの昔に抜いてます」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!