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男が一気に竿を引き、リールで糸を巻き上げる。竿が海面に突き刺さるほどしなっている。俺は慌てて、タモを用意した。
「あともうちょっと!」
俺は自分の獲物でもないのに、興奮して叫んだ。だんだんと白い魚らしき影が近づいてきたので、タモを差し出して、二人で協力して一気に引き上げた。これはかなりの大物だ。俺はタモを陸にあげると、懐中電灯でその獲物の正体を見極めようと照らした。
「えっ!?」
思わず、俺は言葉を失った。これは一体なんだろう。じっくり全体を照らした。
「ひいぃぃぃぃぃっ!」
俺は情けない悲鳴をあげなから、尻餅をついた。男は無表情にその獲物を片手でぶら下げるとこう言った。
「やっとあった。探してたんですよね。左足。」
下から照らされた男には左足が無かった。俺は、その場で意識を失った。
「あんた、大丈夫かね。」
体を揺さぶられて目が覚めた。目をあけると、年配の男性が心配そうに顔を覗きこんでいた。
「だ、大丈夫・・・。」
俺は、コンクリートの上で寝ていた所為で、体のあちらこちらが痛んだ。
「こんな所で、なして寝てたかね。」
老人は、俺に肩を貸しながら聞いてきた。こんな荒唐無稽な話を信じてくれるだろうか。
「実は・・・。」
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