スパークル

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「はい、お疲れ様でしたー」 インストラクターの若いお兄さんが、満面の笑みを浮かべて、声をかけてきた。その言葉で我に返って、あたしはゆっくり、浮き代わりのオーシャンピローから頭を起こした。 大学の同級生、かつ親友の姫野七瀬(ひめのななせ)と一緒に、前からお金を貯めて、やっと実行に移した沖縄旅行だった。 昼の海なら誰にでも見られるけれど、夜の静かな海を眺めてみたい…と七瀬に言われた時には、正直言ってよくわからなかったのだけれど、いざ体感してみたら、こんなにもよいものだとは思っていなかった。海から上がって、ゆっくり階段状の岩場を上っている間も、あたしはどこか夢見心地なままだった。 「楽しかったね、美玖(みく)」 帰りのレンタカーの車中、助手席におさまった七瀬は、少し開けた窓から入ってくる風に髪を揺らしながら、そう言った。いつも慎ましいリアクションしかしない七瀬も、どこかその表情は高揚感に満ちているように見えた。 「いやあ、完全にナイトシュノーケリングを見くびってたよ、あたし」 言いながら、あたしは車のハンドルを、くい、と傾けた。
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