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数十分後。
本を読み終え顔を上げるとさっきまで騒がしかった教室が静まり返っていた。
「あれ……皆は何処だ?もしかして入学式に行っちゃったか?」
自分の焦げ茶の前髪を弄りながら席を離れ辺りの散策しに廊下に出る。
廊下に出るとさっきまでの真新しい白い壁、緑の床は目隠しさせられた様に薄暗く明かりがないとあたりが見渡せないほどである。
手探りでまたゆっくりと散策すると近くに設置されてあった窓を覗くが俺が見たのは青々とした空ではなく赤黒い空がある。そして血の様な真っ赤な液体が床に飛び散っていた。
俺はさっきまでとは違う廊下の様子と赤い液体を見た瞬間、手足が固まった様な感覚に襲われる。その時、耳元で何かが聞こえた。
「ニガ__ナ……イ……__アソボ__オ兄サン」
聞こえてきたのは幼い子供の声。しかし幼い子供の声とは思えないほど感情が篭っていない冷たい様にも聞こえた。
しかし不思議なのはそれだけではない。声は聞こえるのに幾ら見渡しても子供の姿は見当たらない。
考え込んでいた矢先。長い廊下の右方向からコツンっ……コツンっ……と足音が聞こえ、未だ動かない手足の代わりに首を音のする方に視線を向ける。
徐々に足音の正体の姿が見えてくる。
その姿は片手にぼんやりと光る提灯を持ち境中央高校の制服を着た黒の長髪と眼鏡が特徴的なおっとりとした容姿の女の子だった。
すると彼女は俺の姿を見るなり目を見開きしどろもどろ話しかけてくる。
「君は……どうして、此処に?」
「俺は今日から堺中央高校に入学する為に教室に居て。 えと……しばらくして廊下に出て見たらこんな感じになっていて」
「! どうして、まさか……そんな筈ない」
「あ、あの?」
独り言を始めた彼女に声をまたかけると、ハッと気がつく。
そして彼女は俺が体が恐怖で動かないのに気づいたのか足早に近づき肩を揺さぶる。
揺さぶられたからか俺の手足は糸がぷっつり切れた様になり座り込む型になった。
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