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日差しが温かい。
「いい天気だねえ」
『グルッ……』
僕がぼんやりと呟くと、すぐ後ろからと頷くような唸り声が聞こえてきた。
「リオンもそう思う?」
僕はのんびりした声で言ってみた。
返事はなし。どうやら僕の相棒は答えるのも億劫になるくらい日向ぼっこに集中しているみたいだった。
僕たちは背の高い木々に囲まれた森の中にいる。
時間は多分正午に近いくらいだろう。僕たちの頭上を覆う葉っぱの間を縫って、真上の太陽から春特有の柔らかい日差しが漏れてくる。
静かだった。普通なら動物やら虫やらの気配があってもよさそうなものだけど、今は僕たちの周りには一切他の動物の気配はない。
理由はわかりきっている。
僕が今背を預けている生き物ーーより正確に表現するなら、体長三М《ミュー》を超す巨大な獣型のモンスターに怯えているんだろう。
種族名『ハウル・レパード』。
夜空のような色合いの毛皮をもつ四足獣で、足先には鋭い爪が生えそろっている。口を開けばずらりと凶悪な牙が並び、全身を覆うのは強靭かつしなやかな筋肉。
どう見ても凶暴な肉食モンスターの外見だ。
名前はリオンで、僕の相棒。
『……』
いかにも肉食獣でございますって見た目のリオンだけど、眠いのかいつもより大人しい。
日の光を吸ったリオンの黒い毛並みは温かくなっている。僕もまぶたが重くなってきた。
「ふあ……」
僕は盛大にあくびをして、目を閉じてーー
ドドドドドド
「何偉そうに昼寝なんぞしていやがんだ馬鹿ラタがああああああああ!」
「いっづぁ!? 何!?」
次の瞬間、真横からの衝撃にふっ飛ばされていた。何! 何事!?
「って、あれ? カイルじゃん。こんなところで何してるの?」
「一から十まで俺の台詞だバカ野郎」
憮然とした表情で言っているのは、たった今眠りかけていた僕を蹴り起こしたらしい張本人。
黒髪を左右非対称に切り分けた青年で、身長は背伸びした僕よりもさらに頭半個分高いくらい。普段は大人びた顔つきと悪い目つきが特徴的なんだけど、今は苛立ったように普段よりさらに目つきがつり上がっている。
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