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「そういう意味じゃないよ、気に障ったのなら謝る。ただ……最近のイメチェンした志村さんより、今日みたいにジャムパン片手にポニーテールの方が志村さんらしいと思って」
「わたしらしい?」
ミユも佐藤も互いに顔を赤くしていた。
互いに相手を意識して、不意な言葉で嫌われやしないかと怯えてもいる。
「最近はなんだかモデルみたいで、まるで僕が声をかけたら悪いような雰囲気をしていたから……てっきり彼氏でも出来たのかなと思ってたんだよ」
「か!!!」
「でも校内には彼氏とかは居ないようだし、かといって聞くのも悪いと思っていたんだけれど……今日はなんでだろう、妙に僕も饒舌だな」
佐藤は気恥ずかしさに笑ってしまった。
彼の言葉にようやくミユは自分の失敗に気づいた。
佐藤の気を引きたいと肩肘を張っていた自分の姿に、佐藤は幻想の彼氏の姿を感じて気後れしていたのだ。
肩肘を張った姿はさらに近寄りがたい雰囲気をミユに与え、その結果遠慮という形で佐藤との距離を引き離していた。
半ば偶然ではあるが読子に言われたとおりにかつての格好をしたことが佐藤の蟠りを解いていた。
「これからなんだけれどさ、佐藤くんの家に行ってもいいかな?」
佐藤はミユの言葉に頷いて、二人は佐藤が住む安アパートまで歩いて行った。
それから数日後、ミユは読子に会うために再び人魚書店を訪れた。
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