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「誰かをお捜しですか?」
ミユに話しかけたのはマントのような黒いローブを羽織った女性だった。
ミユの見立てでは年齢は二十歳前後、黒髪のストレートで前髪は目元を少し隠しており、どこか地味な印象を受ける。
自分同様に大学の生徒なのだろうかと思いつつも、こんな目立つ格好をしていたら今まで見たことくらいありそうなのに、初めて見る衣装だったことにミユは小首を傾げた。
「人魚姫の魔女を」
ミユは無意識に女性の問いに答えていた。
正確には女性のことを認識し、その様相に小首を傾げたのは返事の後である。
「人魚姫ですか。でしたらここですよ」
女性は言われた言葉を人魚姫の本を探していると言う意味にとらえて、ミユに童話の本を渡した。
しかもハードカバーで表紙の絵柄も無い、いかにも高そうな洋書である。
「ありが……って、申し訳ないけれどいらないですよ」
「あら、そうなの?」
「わたしが探しているのは人魚姫じゃなくて人魚姫の魔女です。本じゃありません」
目の前のお節介焼きに言っても仕方がないかのしれないが、とりあえず聞いてみようとミユは尋ねる。
少し考え事をしたあと女性は逆にミユに尋ね返した。
「───会ってどうするつもりですか」
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