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「もちろん、願いを叶えてもらうのよ」
彼女の回答から、女性はミユのことを危うい人物だと認識した。
だってそうだろう。人魚姫の魔女に願いを叶えてもらいたいと言う割りに、ミユには願いの代償を考えている様子が無いのだから。
下手なことを考える前に話し合いで解決してあげるべきだと判断した女性……人魚書店の店主、本屋(もとや)読子はミユを座敷に招くことにした。
「アナタはお客様のようね。その人について教えてあげるから、こっちに来てよ」
読子はミユの手を引いて、彼女をレジ奥の座敷に招いた。
「ここってお店の奥だけどいいの?」
「いいのいいの。私の店なんだし」
「アナタ、このお店の人だったの」
ミユは同世代だと思っていた読子が本屋の店主と聞いて驚く。
「とりあえず自己紹介をさせてもらうわね。私は本屋読子。この店の店主で……たぶんアナタがお探しの魔女よ」
「本当に?」
「たぶん」
読子はこの店を継いだ際に、先代店主のしていたこともすべて引き継いでいた。
その一つが客の悩みを聞いてあげることで、元を正せば読子もそれがきっかけでこの店に居着いた人間だった。
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