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読子としてはおそらく魔女というのは十数年前に引退した先代店主のことだろうと察しており、彼女の後継者である以上は自分も魔女であると言うより他に無い。
読子としては先代は名実共に魔女であり、自分は違うとは思っている。だが受け継いだ以上は読子の力もまた魔女であるとも思っていた。
「とりあえず誤解を一つずつ解いていきましょうか。
人魚姫の魔女というのは昔からノガミ大学にある都市伝説のようなものね。私が大学に通って居た頃もあったわ。
その正体というのが、この店の前の店主だったのよ。元易者の彼女はお客さんのお悩み相談をしていて、それで好転した人たちの口コミがいつの間にか人魚姫の魔女という噂話になったというわけ」
「先代ということは、今はもうその人はいないのですか」
「ええ。私がこの店を継いだときにね」
先代店主の話をする読子はどこか辛そうで、ミユはその人がもういないのは死別で、それを悲しんでいると解釈した。
「それで、私が店と一緒にお悩み相談も引き継いでいるというわけ」
「では魔女が願いを叶えるというのは……」
「単なる噂ね。でも私で良ければ相談には乗ってあげるわ」
「だったらいいです。相談したところでどうしようもないことなので」
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