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「今のアナタに口で説明してもわからないわ。それとも、アナタは佐藤くんとの関係を進めるために大事なモノを失う覚悟があるのかしら? 人魚姫にとっての声のように」
読子の剣幕にミユは不平不満を言う口を閉ざした。
そのままミユは逃げるように本屋を後にして自宅に戻る。
その足で段ボール箱にしまった以前の服装───今の自分にとっては子供過ぎるとしか思えない服に着替えた。
髪の毛も後ろで束ねていわゆるポニーテールの形にする。これも子供過ぎると思って辞めた髪型だった。
「こんなことをして意味があるのかしら」
そう思いながらも着替えを終えたミユはベッドに背中を預けたのだが、軽く目を閉じたさいにうっかり寝てしまう。時間にして十分程度ではあるがミユは寝ぼけた。
そろそろ明日使う備品を買いに行かないとと用事を思い出したミユは、着替えたことを忘れて電気屋に向かう。
ゼミで使う予定の買い物、しかも大学近くと言うこともあり、同じ店に彼が居ても不思議ではなかった。
「志村さん!」
「あ、佐藤くん」
呼びかけられて振り向いたミユは驚いた。まさか佐藤の方から自分に声をかけてくるなどと。
そのまま二人は必要なモノを買いそろえると、その足で喫茶店に向かう。学生向きの安いコーヒーだが手ごろな価格で飲み放題であり、以前はミユもよく利用した店である。
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