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この物語は、少年少女たちが奇怪な現象に怯えながらも、その正体をつきつめていくという現代におけるダークファンタジーだ。とはいっても、ファンタジー要素はあまりなく、どちらかというとミステリーホラーのような、そんな感じがする。
一文字一文字を、掬い忘れの無いようにゆっくりと目で追う。今では起承転結の承の部分に相当するだろうところまで来ている。丁度、町におかしな現象が起き始めている場面だ。
そこで栞を挟んで、本を閉じ、指で目頭を揉む。久しぶりに教科書以外で大量の文字を見たのだから、目が疲れたのだ。
両手を組み、そのままぐっと上半身を伸ばすように、腕を上に上げる。その拍子に間接がポキポキと鳴った。たかだか10分程ではあるが、同じ姿勢でいつづけると身体が固くなる。ついでに肩も回すと、案の定パキリと音がなった。
「随分熱心に読んでたねぇ。お茶飲むかい?」
塩野目さんが、麦茶が注がれたガラスのコップを差し出してきた。本でできた塀から身を乗り出しているが、よく中身が零れないものだと思う。
「何処まで読めた?」
私がコップを受け取ると、彼はすかさずそう言った。
「まだ序盤も序盤ですよ」
「序盤かぁ~落ち葉アートのあたりとか?」
何でわかるんだ。いや、読んだことのある本ならわかるんだろうが、まさか、この山のような本たちの内容を一つ一つ覚えているのだろうか。
「僕も読んだことあるんだよ。丁度発売された年だったから、今から九年前くらいかな。案外、内容覚えているもんだねぇ。あ、ちなみにそれは仕入れたばかりだよ」
カラカラと彼は笑った。
「ここに在る本、全部読んだことあるんですか」
「だいたいね。でも奥にあるやつとか、一番下にある古い本とかは、大昔に読んだっきりでうっすらとしか覚えてないよ」
彼は少し残念そうにしわの刻まれた顔で笑った。
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