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久しぶりに外へ出た気がする。生活の最低必需品への買い出しの為に外出はしたが、スーパーとここの本屋まで同じルートを往復するものであった。今日は中島さんの背中を追いながら、いつもとは違った道を通る。
「あの、中島さんはどうしてあの本屋に?」
中島さんは私の方へ振り返ると、素直に答えを言わなかった。私がペンとメモ帳を手にしているからだろう。一応これも仕事だ。なんであれキッカケは大事だろう。
「あの、それも本に書かれちゃうんですかね。」
私はその言葉でさえも欠かさずメモに書いた。その様子を見て中島さんは立ち止まる。困っているようだ。
「嘘ですよ。冗談です。書かれたくない箇所があったら言ってくれればわざわざ書くような真似はしないですよ。それに普通の会話なんかはいちいちメモにとりませんしね。」
今まさにメモ書きをしていた私の言葉を信じていないようだ。どれが書かれてどれが書かれないのか、また、どこまでが本の為の質問なのか、それとも普通の会話なのか、困惑しているところはそこら辺の事だろう。予想通り中島さんは質問してくる。
「普通にしてればいいですよね、俺は。田中さんがメモ帳片手に持っちながら質問してくるからなんだか素直に答える事が変な気分なんですけど。」
そう言われ私はメモ帳をしまい、理不尽に質問する。
「なにを言ってるんですか?」
呆気とられた中島さんは静かに足の向きを変えると、不自然なタイミングで再び歩き出した。明らかに動揺している。
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