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一方で、王都マダムステラではロッドにて魔王出現の報道で持ち切りになっていた。
同時に、その号外に記されていたのは『王都精鋭部隊の敗北』という、国民にとっても、兵士を志す者にとっても信じがたい情報。
王都精鋭部隊は、どの兵よりも最強の部隊である。
それはつまり、国にとっての最大戦力という意味であると同時に、それが敗北することはつまり他の部隊では敵わないということにもなる。
カイザーの敗北はマダムステラの国民に不安の波を寄せるものだった。
「ご、号外! 号外!」
その情報が回った数日後、新たな報道が再び世間を騒がせる事となる。
所変わり、マダムステラ城にて。
騒がしい外とは打って変わり、長テーブルを囲いながら静かに食事をとる六人の人影があった。そして外の騒ぎの中心となって言うカイザーも、その中にいる。普段の黒装束とは違い、全身を白のスーツに包み、爽やかな雰囲気を醸し出している。
けれどもその表情は優れない。
「お前、有名人だなぁ。まあ、悪い意味でだけど」
カイザーの右隣に座る巨体の男が煽るように皮肉を言うが、カイザーは気にも留めないといった様子で彼を一瞥する。
「……言うな。相手が悪かった……それだけだ。癪には触るが、こちらに損害はない」
「損害が無いだぁ~? お前が負けた事自体が俺たちにとって大損害なんだよ!! 俺たちの顔に泥を塗りやがって……!」
「ふん、戦場に出てもいない者は口が良く動くものだな……安心しろ。魔王の首はいずれ持ち帰る」
その二人のやり取りを、正面に座る青髪の女性がどうしようと言わんばかりにオロオロと落ち着かない様子で見ている。
「……放っておけ」
そう静かに、彼女に向かって制止を掛けた銀髪の男は溜め息を吐いた。
「お前達はもっと大人になれ。いいか、魔王を倒すのは誰でもいい。問題なのは魔王が生きてまだこの世界にいることだろう」
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