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「さて、話そうか」
まるで気まぐれ。彼は彼の意思で、赴くままに話を始める。
「魔王について、だが。まあ……概ね予想通りといったところか」
その場にいる者が、視線を一つにする。
「混沌の魔王の動きが変わった辺りから、魔王本人の身に何かが起きたことは分かった。だがそれが……負傷か、もしくは殺害される、のどちらかが掴めずにいた」
王は淡々と続ける。
「だが、ロッドに送り込んだゴーレムが破壊された時に、現在の魔王が混沌では無いことが確定した。そして、その技量が混沌に比べて雑なものであることも解る。なら、魔王という席についたのは経験の薄い若い年齢の者ということも解る」
これまで、王と魔王は戦場だけでなく戦略という面でも戦い続けてきた。その為、王はこれまでと違う手応えに違和感を覚え、現魔王の勇士の存在に気づくことができたのだ。
「その者が考え付くとすれば精々武器の調達だろうと思い、ロッドにソーサラーを送り込んだ。まあ、敗北は少々予想外ではあったが……おかげで魔王の情報は多く得られた」
王は心の籠っていない拍手をカイザーに送る。それでも、カイザーにとってはこれ以上にない喜びを感じることができた。
それほどまでに、王の存在はカイザーにとって大きかった。
「ご苦労だったな。ソーサラーよ」
「……有り難き……お言葉です……王」
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