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「ところで、魔王だが……若い故に考え方も感情的だ。各国の王から聞き出した情報を集計すると……次に奴が現れるのはフランドロス……その中央都市サザングロアだろう……近日中にそこに精鋭部隊含めた兵を送るつもりだ」
「何故……そこだと?」
その答えに、カイザーが聞く。疑っているわけではなく、何故その結論に至ったのか解らなかったのだ。検討もつかない。
カイザーにとって、もはやこれは予測を越えた予知であった。
対して王は、まるで赤子から聞かれたかのように面倒臭そうに言葉を探した。
「まず……フランドロスで魔物狩りという儀式が行われていることは知っているな?」
初耳だったカイザーは、それを悟られまいと表情を変えずに頷く。
「国王から聞いた話だが……王女が逃亡したそうだ。しかし、これがもし逃亡でなく魔物狩りを止めるために動いていたなら……と、仮定しよう」
「え、王女が……!? え……?」
もうこの時点でカイザーはついてこれていなかった。それでも王は止まらず話を進める。
「その行き先は……まぁ、多分……魔王の所だろう」
「……!? しかし、それは……命を落としかねない危険な賭けでは……!?」
「以前までならな……。王女は運が良い。今の魔王は不殺を貫いているようだ。ロッドといい、メモルライナといい、死者がいないのが何よりの証拠だ」
カイザーは言われてメモルライナでの戦闘を思い出していた。
感情的になった魔王に一度粉微塵にされ死にかけたカイザーだったが、思い返せば再生中に幹部が魔王に不殺だとか、それらしいことを言っていた気がする。
過程はどうあれ、結果的にカイザーは敗北したが、生きている。それが彼を納得させる理由となった。
「自分が勇者か救世主となったと勘違いしているのだろう。今の魔王は、魔王である前に力を持った子供だ。少女から助けを求められ、それを叶えるだけの力があるなら、選ぶ選択は一つだけだ」
それ以上の説明を、王はせず
言葉の代わりに、静かに舌打ちをした。
「魔王が正義を振る舞うなど、可笑しな事だ。正義は我らにある。奴らがしているのは偽善だと気づいてもらわねばな」
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