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とはいえ、結果的に一人でも何とか準備も間に合ったし、今さらこいつらに文句言っても仕方ない。
今回ここに来た目的は、いつもの如くマンドラゴラの回収だ。そして、もうすぐそれは完遂するっ!
今までサクラは微かな物音で起きてきたが、余程セリーゼの相手がしんどかったのか、全く起きる気配がない。
永きに渡る俺のマンドラゴラ回収作戦は、いよいよ終わりを迎えようとしていた。ふふふ、返してもらうぞ睡眠時間を。
「……あばよ」
部屋を出る途中、ふと、寝ているセリーゼが目に映り少しの間、思考が止まる。
気品とか、服装とか、度胸とか。ここまで見てきたが確かにセリーゼには王女という肩書きを疑わせない風格があった。
けれど、サクラに抱かれて寝ているその姿はどこからどう見ても子供のそれだ。
俺は、魔王として……静かに寝息をたてる少女が命を張る意味を、もっと考えないといけないのかもしれない。
「……魔王、か」
先代であれ、俺であれ、魔王という存在がなければセリーゼは苦しむことはなかったのだろう。
だけど、だからと言ってサクラ達魔物がいなくなれば良いなんて、そんなことは思わない。
どちらも意思がある。で、あれば理解し合える筈だ。その為に俺はもっと、この世界のことを理解しないといけないんだ。
理解し、戦争を終わらせる為には、人と話し合う場を作らないといけない。その場を作る為には、振り撒かれる刃を払う力を付けないといけない。だから俺はもっと強くならないといけないんだ。
でないと、何も変えられないだろう。
「……う、ん」
「!?」
後から考えてみれば、それはなんでもない只の寝言だった。けれど、何度も失敗してきたことによるトラウマのせいで俺は驚き、手に持っていたマンドラゴラを落としてしまった。
血の気が引いたよね。
部屋中に世紀末が襲来したかのような悲鳴が響き渡り……二人が起きた。
「おはよう。良い朝だな」
「……性懲りもなく、また……貴方という人は……!」
「違う! 聞いてくれ! 本当にこいつのせいで寝られないんだよ! だから」
「聞く耳、持つと思いますか?」
「ぁ」
その後、俺がどうなったのかは想像にお任せしよう。
ただ、一つだけ言わせてくれ。
魔物って、怖いわ。
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