3153人が本棚に入れています
本棚に追加
いよいよ出発の時が来た。
準備面ではスムーズだった筈なのに何故か身内から妨害を受けたことによりタイムロスが生じたことは忘れよう。
さて、今回の遠征のメンバーだがメモルライナ同様マスターに城を任せることにした。
前回と違うところと言えば、雑兵を一切無くし、少数精鋭での出撃にしたことだ。
理由は二つ。
一つは町の復旧に当てたいから。
もう一つは、今回の中心となる魔物狩りの廃止において、魔物らしい魔物を連れていくことはどうにも良い方向にことが進むように思えないからだ。
俺「魔物狩りを止めましょう」
↓
町の人「いや、お前魔物連れてるじゃん? てことはお前魔物だから処刑な」
と、そうなる気がする。
だからこそ、今回は戦闘を最小限に、目的を説得に絞った部隊編成にしてある。
んー、我ながら考えが浅い気もするが時間も惜しいのでやるしかないな。
ロッドはフランドロスへの道中に通るのでそこで他のメンバーを拾っていく。
ニアちゃん達には馬車内で作戦を伝えよう。
「なあ、魔王……」
いざ、馬車に乗ろうって時に、セリーゼが申し訳なさそうに顔を俯かせながら話しかけてきた。
まるで、親の大切なものを壊した子供のような気まずい雰囲気を醸し出している。
「なんだ? ……トイレか?」
「ち、ちがう!」
全力で否定されたが、わからん。わからんので相手の言葉を待つことにした。
「……その、本当に……いいのか?」
「……なにが?」
「国の事……お前達には関係無い事だと思うし……その、私に協力しても良いこと無いと思うし……」
「おま……ここまで来といて……」
あれだ。ジェットコースターとか余裕~と啖呵を切っておいていざ直前になった途端に怖じ気づく奴だ。
魔王を前にしても強気だったセリーゼは、ここに来て不安や、利益の無い俺達からの協力に罪悪感を覚えたらしい。
けど、本当にそんなの今更だ。
フランドロスなんて大国に恩を売ることは魔物側にとって魅力は大きい。やるだけの価値はある。
女の子も紹介してもらえる。俺にとってもハッピーだ。
彼女が想像するよりも、俺達の利点は大いにあるんだ。
でも、それよりも、俺をここまで動かしているのは
「やるんだろ、王女様?」
「……!」
そんな利益とかリスクとか関係の無い、けれど言葉に出来ない曖昧な感情なんだと思う。
「国を、守ろうぜ」
最初のコメントを投稿しよう!