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「けど、この話の本筋はそこじゃねぇんだろ?」
窓の外を見るニアちゃんが、ボソッと呟くように言った。その言葉に、セリーゼは首をかしげる。
「……?」
「あー……なんつったら良いのか……おい、魔王!」
あれ、ここで俺に振る?
ビックリしたわ。つか、「おい、魔王」ってなんだよ。上下関係どうなってんだよ魔王軍。
突然の無茶ぶりともとれるキラーパスだったが、幸い俺もこの時ニアちゃんと同じ事を考えていた為、補足で説明することができた。
「いや、なんつーか……魔物に対する悪いイメージってのは、必ずしも魔物の行為によるものじゃないってことだ。人の犯した悪行だって、言い方次第で魔物のせいに出来る。魔物狩りだって少なからず魔物のイメージダウンに関係しているってことだよ」
セリーゼはまだ理解できていないのか、眉を寄せて難しい顔をしている。それに見かねたサクラが溜め息を吐く。
「例えば、殺したい人を魔物と呼び、殺すとしましょう。この方法を利用することで何人もの人を殺せますね? ですが、その内に殺してきた人が魔物でないという噂がたったり、実際にそれが判明することもあるでしょう。ですが、それに対しその人間が罰されることはないでしょう」
「な、なぜだ?」
「殺した、という行為だけでなく、その動機さえも魔物のせいに出来るからです」
「操られていたとか適当にでっち上げりゃ良いもんな」
「じゃあ、人間はもう……魔物を信用できないじゃないのか?」
「いや、そうでもねぇよ」
方法はある。それを確信していた俺は話の流れを切った。
それにより、馬車内にいる者達の視線が集まり、それを確認してから俺は考えをのべた。
この考えを聞いたら、とても非現実に聞こえるだろう。
出来るわけがないと思うだろうが、それでも、やらないわけにはいかないから。
「これまでの魔物が人を殺していたなら、これからの魔物で人を救えば良い。それも、大勢の人を、大勢の前でな」
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