第三話:いざ、遠征に!

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 記念すべき第一回の遠征。  目的は魔王城から北東に位置する町『ロッド』の難民救済、それと昨日の召喚で使い切ってしまった材料集めである。目についた珍しい材料があればそれも回収対象だ。  魔王城二階の寝室の窓から外を覗くと、中庭過ぎた先の門前で三頭の馬が気合十分に鼻息荒くしているのが見える。  その周りを囲むように大勢のコボルトやゾンビたちがいた。 「……用意が早いことは良いことだな」  軽く伸びをする。名残惜しいフカフカのベッドから立った瞬間、背筋に悪寒が走る。 いや、これは敵襲が来たとか俺の暗殺をもくろむやつとかそんな類のものではない。むしろ側近の人というか《……魔王様》この人この人。脳内に話し掛けてきたよ。  あー怖い。あれだよ、俺ってさ、一人っ子っていうのもあって少し我儘に育ったのかな。自分のペースは崩されたくないタイプの人間なわけで  ゾク……。  あかんやつや。  またも、悪寒。その寒気ときたらどんどん強くなっていく。間違いない。近付いている。 ヤバい、隠れなければ……どこに? ベッドの下? 棚の中? どこが一番「……魔王様」ゲームオーバーだ。今度はご対面である。  着替えも中途半端に上半身裸で布団にくるまる俺を見てサクラがゴミを見る目でこう言った。 「遅刻です。さっさと支度を済ませてください」
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