3153人が本棚に入れています
本棚に追加
/482ページ
ん?
「なあ、魔物は魔王の呼びかけに答えるんだよな? じゃあ、呼び掛ける前の行動は自由って事なんだよな……なら勝手に人を襲う事はあるのか?」
「私のような幹部であれば、そのような行動は可能ですがゾンビやコボルトたちのような下級魔族は無理ですね。基本的に彼らの自我は魔王様の自我に依存していますので、魔王様が余程人間を憎んでいない限りそのような行動をすることはございません」
「そうか」
やっぱり。なら、さっきの男の話と言い、この町のことと言い、この被害の少なさ……先代魔王はもしかして人を殺すつもりはそんなになかったんじゃないか?
今はもういないから、話は聞けないけど……どうも俺は先代のやり方が引っかかる。本当に人間を殺そうとしていたのかな……。どうも、そんな風には考えにくい。
それに、先代は不殺というわけでもないのだ。これはどう説明つける?
まあ、考えていても仕方がないな。
ひとまずは目的を達成することに専念しよう。
町に入ると、案の定というかなんというか……俺たちはロッド住民の視線をかき集めることになる。これが憎しみの視線か。ええい、ままよ! 腹くくれ俺!
意を決して町の中に歩みを進めていく。
しかし警戒心からか、住民は俺たちになかなか手を出しては来ない。しばらく進むと俺たちの対面から何やら雰囲気のある老人が歩み寄ってきた。
「あれは、ロッドの町長ですね。まさか本人の方から来るとは」
町長だと!?
確かに魔物が来たっていうのに果敢に一人で来るとは、中々肝の座った爺さんだなぁ。
感心しているのも束の間に、サクラが肩を叩いてきた。
「魔王様……マズイ事になりました」
「……? ……うぉわ!」
確かにこれはマズイ……俺達はこの老人に気を取られている内に、街の住民たちに囲まれてしまっていたのだ。
この後の展開は想像がつく。
石を投げられる。罵声を浴びる。どんなものが飛んでくるかと思ったが
「魔物の方ですか!? ようこそいらしてくれましたね! 何もない町ですがどうぞお寛ぎ下さい!」
最初のコメントを投稿しよう!