第三話:いざ、遠征に!

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「へ?」  どういうこと?  意味が分からなかったのでウィキペディア担当サクラの方を見たが、これはこれは珍しく、流石のサクラもこれには困惑した表情を浮かべていた。 「外は冷えます故、良かったら中の方にお入りください」 「え、ああ、はい……って何この状況」 「中に入る前に一ついいですか? あなた方は魔物である私たちを何とも思わないのですか?」  ナイスだサクラ! この状況でも冷静に分析ができるお前が誇らしくも恐ろしいぜ! 「そう思われるのも仕方ありませんね……このご時世、魔物である皆様はとても生きづらく思います。ですが、魔物の皆さんは人間に対して害などではありません。どころか、とても良くしてくださる」  町長の言葉に「そうだ、俺なんかはこの前運搬中に腰を痛めた所、魔物のねーちゃんに助けられたんだ」と村人Aが便乗してきた。なんだよ、モブが出しゃばんなよ。 「王都のやり口は、元から我々も気に入りませんでした。だからこそ、和解の意味も込めて私たちは王都ではなく魔物の味方をしようと思ったのです」 「そうだったのか」 「それに、我々の町の教祖様も実は魔物なんですよ」 「「え」」  俺とサクラ、二人の顔が向き合う。このままキスしてしまいそうだ。つかこの町宗教とかあったのかよ。 「詳しくお聞かせ願いますか?」 「え、ええ。教祖様がいらしたのはつい最近のことです……」  貧困に苦しむ町の人の前にさっそうと現れた教祖様は「嫌ならやめちゃえばいいじゃん」と言い、街に大量の物資を寄付してくれたらしい。税を払うので精いっぱいだった町の人々は教祖に対しての疑念を抱く事無く、深く感謝し、喜び、そいつに尽くす道を選んだそうだ。  そして出来た宗教の名を『自由教』と名付け、今では多くの信者たちがいるみたい。  何だこの町……。 「では今、あなた方は税を払っていないのですか?」 「いえいえ払ってますよ……出ないと王都から目を付けられてしまいますので……ですが食料などの危機は教祖様のお陰で去りました。本当に感謝しております」  それはいいけど、その教祖は魔物なんだよな。何だってそんなことを。  俺の考えはやはりサクラにはお見通しだったようで、彼女はそっと耳物とでこう囁く 「恐らく、私の知る者だと思われます。ここはその教祖に合う事を優先するべきかと」
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