第三話:いざ、遠征に!

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 そうだな。俺は頷いて答えると言われた通り、町長にその教祖とやらを紹介するよう頼んだ。二つ返事で許可が下り、俺達はその教団に連れて言って貰う事になった。  貧相な町の風景に似合わず、協会はやけにきれいな見た目をしていた。まず、建物がやけにでかい。街の外からも見えてはいたのだが、一昔前の城かなんかだと思っていた。まさかそれが最近建てられた教会だったとは。 「ありがとうございます。お願いしたいのですが、ここから先は私たちだけで入っても良いですか?」 「ええ。勿論ですとも。ごゆっくりしてくださいませ」  そういうと町長は素直にその場を後にした。これでこの場にいるのは俺とサクラだけだ。万が一、危険と判断したら、いつでも魔物を呼び出す準備は出来ている。  鬼が出るか、蛇が出るか……  協会の扉を押す。思ったより軽いと感じた。  信者一人いない協会内に、まるで俺達が来ることを知っていたかのように、ただ一人少女が胡坐をかいて俺達を見据えていた。  エメラルドのような緑の短髪。大きな目のあどけなさ残る顔つき。特徴的なのは口元から覗かせる八重歯だ。推定十代前半の彼女からはどことなく危険な匂いがしてくる。 「久しぶりだねぇサクラ……その男は誰だい? まさか彼氏とか言わないだろうねぇ」  サクラとは対極的な軽い口調の彼女は重そうに腰を上げるとトコトコとこちらに向かって歩み寄って来た。 「やはりあなたでしたか……シエラ」  溜め息混じりにサクラが言った。  シエラ? 聞いたことあるな……誰だっけ?
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