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「あ、皆も来たんだ!」
「皆?」
「うん、ロッドの子供たちだよ!」
言われて気付く。確かにこの家の周りには子供が集まってきている。その子供たちの「あめちょーだい!」というオーダーに答え、おばあちゃんがせっせと飴をこね始める。
見ていると、何だか懐かしい気分になる。
ほんのりノスタルジーを胸に、少し切ない気分になりふと元居た日本を懐かしんでしまう。未練など無いと思っていたが、もうあの世界には帰れないのか、と考えると少し悲しい気分になった。
「おばあちゃーん、飴一個ちょうだいー!」
「はいはい、順番ですよ」
なんとも微笑ましい。こうしてみると、本当にただの子供だなシエラは。サクラと同じ魔王の幹部には見えない。
その後俺は、シエラと共にこの町を堪能した。駄菓子屋についてもそうだが、この町は意外にも、家畜の育成という面において、目を見張るものがあった。
ジュービーフという牛を飼育しているのだが、この動物の管理レベルがかなり高かった。
餌の調整や調合。健康管理、衛生管理。どれも貧困故に十分ではないものの、しっかりと拘りを持って行われていた。
育成に必要な知識や技術は裕福でないからこそ培われたものなのだろうが、その技術たるや素人目でも十分に伝わって来るほど。これから支援していけばきっとその結果はついてくるだろう。
と、今日見ただけでこの町が消えるべきでないと判断するのに十分な情報が手に入った。
明日、この町に物資を置いて帰る。それで今回の遠征は成功だ。
予想外に早く、目的は達成できそうだ。
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