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その日の夜。
日も沈んできたため、俺達は町長の提案もあり、街の宿を借りることにした。
宿には町の雰囲気に似合わないくらい真っ白できれいな布団が敷かれていて、風呂もついている。
「やったー! おっふろー!」
最初、大はしゃぎで風呂に飛び込んだのはシエラで、まあ全裸だ。
「おいおい、はしゃぎ過ぎだろ……ったく」
「……ったく、ではなく魔王様? 何故あなたも浴槽にいるのでしょうか」
え、そりゃ当然俺は魔王だから別に彼女達の裸を見ても大丈夫
「うぉわ!?」
と思ったが、ここでガチの殺気を纏った目つぶしが俺の鼻先を撫でた。
あっぶねええええええ!
今のは洒落にならんぞ!
「やはり魔王様の脳みそはお腐れのようですね? 気持ちが悪いので外で待っていてください」
結局、追い出された。サクラたちが風呂から上がるまで町の外で待つ羽目になった。
*
「ぶええええええッくしょいい!!」
夜のロッドは冷えるな。
かれこれ十五分は外に立たされている。二人はもう風呂から上がったのだろうか。よくよく考えたら俺には二人の状況を知る手段が無かった。故に、戻りづらい。
多分大丈夫だろう。流石に十五分は長いわ。うん、普通はもうあがってるよね。大丈夫だと思う。
自分にそう言い聞かせながら俺は宿に向かう。
その道中、町長を見かけたので声を掛けようとしたのだが、やめた。
何やら様子が変だった。
町長と並ぶように背丈の高い男の影があった。二人で何かを話している。俺は気配を消し、聞き耳を立てた。
「……もうこれで解放されるのですね?」
「ええ。ここまでよくぞ追い込んでくれましたね。魔王の幹部というレアものを用意したのです。報酬は期待してもいいですよ」
「なるべく、苦しみを与えずに殺してほしい」
「そこは、我々で決めるのでご安心を。深夜にまた来ます。住民には避難命令を出しておいてくださいね」
「……ええ」
その言葉を最後に、二人は闇の中へと消えていく。
あー……そういう事か。
町の人達が優しかったのも、快く俺たちを向かい入れたのも、全部納得がいった。胸の奥から悔しさが込み上げてくる。
俺たちはまんまと敵の罠にかかってしまっていたということか。
すぐさま俺は宿に向かっていった。進む道は少し遠回りに、町長たちに遭遇しない道を選んで進んだ。
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