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宿につくと、部屋のドアをノックしないまま勢いのまま開けてしまった。
――――それが一つ目の間違いだったのだろう。
ヒンヤリとした気温の低下を感じる。
「なんだ? やけに寒いなこの部屋……いや、そんなことよりサクうぉわああああああ!!」
ギョッとしたのも束の間。次の瞬間、俺の体は足元から生えてきた氷の木によって拘束された。なんだこれは、クソ、体が動かねえ!?
「魔王様の頭に入っているのは、どうやらカニみそのようですね。女性の入浴時の部屋の出入りは禁止……何度言わせるのですか」
もがく俺の前に、バスタオルを体に巻いたサクラが現れた。あら、色っぽい。思わず見惚れてしまうくらい、彼女の体は締まっていて、けれども出る所は出ていて妙に挑発的なボディラインをしていた。……じゃなくて。
「大変だぞサクラ……この町のもがぁ!?」
俺が自分たちのこの危機的状況を話す前に、氷が俺の口から気管にかけて覆ってくる。ちょっと待ってこれ本当に死ぬ奴だから! 息できない奴だからぁ!
「~~~~~ッ!!」
「当分、そうしててください」
違う! 誤解なんだ、確かにエロい目はしていたがそれは生理現象で仕方がないことなんだ! というかそんなことよりも町ぐるみで俺たちはハメられていて、
あ……意識飛ぶ! 伝えなきゃ、サクラたちに……この町は、やべえ、って。
あ……俺もやべえ。あ、あ、あ、ああ……
らめええええええええッッッ!!
興味津々に、風呂から上がったシエラが俺を見てケラケラと笑う光景を最後に、ついに俺の意識は深い闇に包まれてしまった。
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