第四話:東のシエラ

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 ……一体俺はどれだけ寝ていたのだろう。  暗い視界は徐々に明るみを増していき、俺の意識は完全に回復した。寝ぼけ顔の俺の視界に映ったのはサクラだった。その隣にはシエラがいる。  が、二人とも何やら顔つきが鋭く、まさに臨戦体制といった感じである。 「……まさに地獄を見た気分だよ」 「あら。おはようございます魔王様。こんな時にも呑気に寝ているなんて、余程危機管理能力の無い方ですね。ナマコの生まれ変わりでしょうか?」 「ちっげーよ! つかこれはお前の仕業だろうが!」 「っしっ! 二人とも、静かに!」  シエラに制され、俺たちは互いにそっぽを向く。こいつマジ、ホントマジでホント……! 歯が砕ける勢いで歯ぎしりする俺を他所に、二人は部屋の隅に移動していく。そして、自分の顔が出ないぎりぎりの所から窓の外を見る。  ……どうやら俺は、間に合わなかったらしい。  外には、俺達の宿を囲うようにして、道中に見かけた鎧の男のような恰好をした兵士が剣を構えて立っていた。俺たちの寝室を見つめ、品定めをするかのような目で。  王都の兵士って奴らだ。ここにいる意味は火を見るよりも明らかな訳だが、奴らが何故ここにいるのかを考えると……考えたくはないが敵はあいつらだけじゃないって事だ。そして、それが誰なのか……俺は知っている。 「囲まれていますね。数は十人そこらですか……」  外を見ず、サクラはそう呟いた。 「どういうこと? 何で王都の連中がこんなところに……」 「おそらく、この町の者の所為でしょうね」 「町の!? 嘘だ、そんな事ないよ! だって町の人は皆優しいし……」 「なら、どうやってこの状況を説明しますか? 少なくとも、私たちがここに集まっている事は私たち以外に町民たちしか知り得ません。恐らく、シエラが魔物としてここに来た時点で、何者かが王都へ報告したのでしょう……」  と、サクラは俺しか知りえない情報を言い当て、悔しそうに爪を噛んだ。 「私としたことが、まんまとハメられてしまいました。しかし、まずいですねこの状況……どうやって彼らを退けるか……」  冷静に次の手を考えているのか、俯くサクラ。そんな彼女の指示を待つシエラ。歯ぎしりする俺。  ……この状況、腑に落ちねえ!  だって俺知ってたもん! 意識落とされてなきゃこんなことにならなかったもん!
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