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順を追って説明しよう。
俺は確かに酒に寄った勢いで電車に飛び込み、死んだ。
筈だった。しかし、どういうわけか電車は俺の目の前で停止したのだ。いや、正確にいうと電車を含む全ての物の時間が止まったのだ。
驚く間もなく信じられないことは続く。
今度は俺と電車の間を割って入るのように光の粒が現れたのだ。
その光の粒は巨大化、変形を繰り返し、やがて人の形になっていく。そして、光は徐々に明るみを無くしていき、金髪の美少女が姿を現したのだ
何を言っているのかわからんと思うが、大丈夫。俺も訳がわからん。
美少女は言った
「あなたの人生はここで終わります。約二十四年と半月間お疲れさまでした」
淡々とした口調で告げる彼女に、普段の俺なら不信感を抱くのだが、不思議とこの時俺は「ああ、そうか俺は死んだんだな」と納得できた。多分、不思議な力が働いてるやつだ。
美少女は続けた
「次の生まれ変わり先はアルゼンチンモリゴキブリです。この生での評価ポイントが高いおかげでは肉体への憑依の優先度が高く、すぐに生まれ変われます。良かったですね」
「……そうか」
え、俺ゴキブリに生まれ変わるの?
何故かその思考だけは許されてたみたいで、それまで死に対して諦めがついていた俺でも一気に死にたくなくなった。
「因みに、生まれ変わりの際この人生で得たあなたの能力を一つ引き継げますので、その辺の手続きを天界にて済ませたいと思います。ご同行よろしくお願いします相模幸助さん」
……は?
「え、あの」
俺に向け伸ばされた彼女の手を避けると、彼女は目に見えて不機嫌そうな表情をした。
「なんですか? 未練ですか? 残念ですが蘇りは無理ですよ。今ここで電車は止まってますが、もうこれあなたの体轢いてますから。あなたミンチですから。今戻っても魂だけがこの辺フヨフヨするだけですよ」
「だから!」
容赦無く畳み掛けてくる彼女の言葉を遮るように、俺は言った
「人違いです」
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