第1章 始まりに必要なこと

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目が覚めると15年近く見慣れた自室の天井が、視界いっぱいに広がっていた。さらに部屋を見渡せば、積み上げられたラノベやゲームの数々が乱雑に床やテーブルを占拠している。 「はぁぁ、今日からまた学生生活再開か」 部屋の主人である彼は、デジタル時計に表示された日付に目が行き、ため息まじりに呟いた。 本日4月7日は、彼が入学する公立沼継学園の入学式である。 まだ完全に覚醒していない体と脳を叱咤しつつ、新しい制服をハンガーから外し、袖を通す。 着慣れてないこともあり、部屋の壁に取り付けられた鏡に映る自分の姿はまるで別人のように感じる。 アニメ三昧、ゲーム三昧の夢のような春休みは、あっという間に終わってしまった。 入学式が終わったら、部屋の中を片付けないとな。 改めて部屋を見渡した彼は、今日1日のプランを組み立てつつ2階にある自室から、1階にあるリビングへフラフラした足取りで移動した。 「あら、おはよう宗太。今日は早起きね、てっきり今日もお昼に起きるかと思ってたわ」 リビングに入ると、キッチンに立っていた母、咲江から挨拶と一緒に小言を言われた。 「おはよう、お金出してもらってるのに初日から遅刻はしないよ」 世間ではあまり良い目で見慣れないオタクな彼だが、集団の輪を乱すような行動はしない協調性は、人並み持ってるはず。 「それなら親としてはありがたいわ。でも、宗太の趣味にとやかく言うつもりはないけれど、あの抱き枕はベランダに干しづらいわ」 うっ、それは上手い具合にやってもらいところだな。 「まぁ、いいわ。朝ごはんできてるから冷めないうちに食べちゃいなさい」 「申し訳ないとは思ってるけど、好きなんだからしょうがないじゃん。人目に触れないように気をつけるよ」 「その意識があれば問題ないわね。とにかく人様に迷惑を掛けないようにね」 「はーい」 母の小言に耳を傾けながら、宗太は朝食に食べ始める。
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