朝焼けの約束

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 電話は妻が入院する産院からだった。  切迫早産の危険性があると言う事で、もう2ヶ月も入院していたが、突然の破水があった為に緊急の帝王切開となった。  そうして産まれて来たのは、手のひら程の小さな小さな女の子。  羊水と言う名の海の中、小さくても懸命に生きてきた。  そんな彼女を見た途端、僕の目からはぽろぽろと涙が溢れ出した。   保育器の中にいる我が子の姿を、僕はパシャリとスマホのカメラの中に収める。    あの高台で撮った最後の画像には、鮮やかな朝焼けよりも更に眩しいあの少女の笑顔。  次の画像には、たった今産まれて来た我が子の寝顔。  これでは順番があべこべだと、何だか少し可笑くなった。 「ねえ、頼んでおいたこの子の名前、もう決めてくれた?」  そう聞かれて、僕は妻である実咲の顔を見る。  やはりそうだと、改めて確信した。  あの少女の面差しは、実咲にとてもよく似ている。 「みらい……『未来』って、どうかな?」  唐突に浮かんだ名前だった。  けれど、この子には今度こそ未来ある人生を歩んで欲しい、そう切に思うから。 「未来ちゃん? いいね、とっても可愛い」  微笑む実咲の顔を見て、僕も釣られて微笑んだ。 「あなたのそんな笑顔、久し振りに見た。私、この子を産んで本当に良かった」  そう言って涙ぐむ実咲を、愛しさの余り覆い被さるようにして抱き締めた。  妹ばかりか、妻にまでそんな心配を掛けて来た自分を心底情けなく思う。 「ごめん……ありがとう」  そんな言葉しか出なかったけれど、今はそれが僕の精一杯だった。
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