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知らない人間に対しての警戒心がまるでない。
これではいけないと、僕は少女に少し脅しを掛けた。
「あのねぇ、もしかしたら僕は悪い大人かもしれないよ? このまま君を誘拐しちゃうかも」
そう言うと、少女は目を丸くして僕の顔を覗き込んで来た。
相手が子供とは言え、そんな風に女の子に自分の顔をマジマジと見られてしまうとは。
さすがに気恥ずかしくなって、僕は顔を赤らめた。
「ふふ、お兄さん顔真っ赤! 本当に悪い人はそんな顔しないよ?」
僕は呆れて二の句がつげなくなった。
「もう勝手にしろよ。でも少しの間だけだよ」
「うん、ありがとう!」
その後は浜辺を一緒に散歩しながら、他愛のない会話を交わした。
不思議と僕は、その少女に初めて出会ったとは思えないような親近感を持った。
「明日も来るね!」そう言って少女は一人で去って行く。
ちょっと待て、親はどうした?
そんな疑問が頭をもたげたが、もう特に追求する気にもならなかった。
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