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妹は兄の僕をとても慕ってくれた。
「大きくなったら望(のぞむ)お兄ちゃんのお嫁さんになる!」
口癖のように繰り返されるその台詞は、小学四年の十歳になっても変わらなかった。
「美希(みき)ちゃんは本当に望くんの事が大好きなんだね、可愛い」
呑気にそんな事を言うのは、幼なじみで僕の彼女でもある実咲(みさき)。
「言っとくけど、美希は実咲の事をかなりライバル視してるよ?」
「え、そうなの? じゃあ私も負けられないなぁ」
実咲の方は冗談混じりだったが、美希の方は本気だったに違いない。
その時の僕と実咲は高校二年生。
写真を撮る事が好きだった僕は、高校でも写真部に所属し、ここから見える景色を毎日カメラに収めるのが日課だった。
特にこの場所は東を向いている為、昇りくる太陽は最高の被写体だ。
移りゆく季節、移りゆく時間により、その彩や形を変える空と海とに、僕はすっかりと魅了されていた。
『ここで綺麗な朝焼けを見ると、その日は良い事がある』
一般に朝焼けは雨の前兆なんて言うけれど、僕達はそんなジンクスを信じていた。
こんな僕の道楽に、毎朝付き合ってくれる実咲。
美希もついて来たがったが、朝の弱い妹はなかなか早朝に起きる事が出来ない。
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