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妹をちゃんと連れて来てやっていれば……
僕が写真なんかに夢中にならなければ……
投げ捨てたカメラは物の見事に壊れていた。
中のデータは無事だったけれど、自らカードごと破壊した。
それを機に僕は、写真を撮る事を一切やめてしまった。
あの日の過ちと妹を忘れない為に、僕は今も毎朝ここに来るのだと……
そんな僕の昔話を、少女は真剣な顔をしながら黙って聞いていた。
「お兄さん、泣いてる」
「え?」
迂闊にも、いつの間にか僕の目からは涙が零れ落ちていたらしい。
「あー、ハンカチないや。ごめんね」
そう言うと、少女は自分の服の袖でごしごしとその涙を拭き取ってくれた。
「はは、ありがとう」
少女はにこりと微笑むと、そのまま東へと顔を向けた。
「わあ、見て! 今日の朝焼け、すっごく綺麗だよ!」
その声に釣られて何気なく見たその光景に、僕は思わず息を飲んだ。
天女の羽衣のような極彩色の雲をたなびかせる太陽。
それは例えようのない程の美しい光を放ち、闇をどんどんと飲む込むように染め上げていく。
あっと言う間に終わってしまう、それは束の間の出来事。
この瞬間を閉じ込めたい……
思わずそんな衝動に駆られるが、もう僕はその手段を自ら捨ててしまっていた。
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