朝焼けの約束

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「ねえ、お兄さんスマホとか持ってる? あの朝焼けを撮って欲しいの。それを後で私にくれない?」   「え……あ、ああ」    そうか、今時の携帯のカメラ機能は馬鹿に出来ない。  少し抵抗を覚えつつも、パシャパシャと何枚か撮ってみた。  昔の感覚が徐々に蘇って来る。  一度(ひとたび)ファインダーを覗くと、そこから見える光景が己の総てとなり、視覚以外の感覚が麻痺して一切の情報が遮断され、この目に入る映像の世界だけに没頭する。    戦場カメラマンなどがそうであるように、僕もそんな人間の一人だった。    例え使うツールが違っても、その状況は同じ。  いつの間にか、夢中でシャッターを切る自分がいる。  感覚と共に蘇る、あの日の記憶。  あの時の朝焼けの空の色を、僕はまるで覚えていなかった。  なのに……  この空は何だかあの日の空に似ている。  妹を失った、あの忌まわしい日の朝焼けそのものなんじゃないのかと、そんな気がしてならない。
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