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そんな時、突然スマホの画面に少女の姿が映り込んできて、僕はドキリとした。
少女がいるのは、妹が命を散らしたあの崖の側。
いつもならばそこにある筈の進入禁止の立て札が今はない。
(まさかあの子は……わざと? 一体何がしたいんだ?)
海風に晒されふらつく姿に戦慄が走る。
何とも嫌な予感が、僕の体を少女の元へと俊敏に突き動かしていた。
「そっちへ行くな……美希っ!!」
無意識に妹の名を叫びながら、ぐいと乱暴にその腕を掴んで引き寄せた。
そのまま、その華奢な体を強く抱き締める。
「やめてくれ……もういやだ……僕のせいでまた誰かを失うなんて、もう嫌なんだよ……」
譫言(うわごと)のように僕は呟く。
カタカタと震えが止まらない僕の体を、少女の細い腕がふんわりと包み込んだ。
「『綺麗な朝焼けを見ると、その日は良い事がある』」
その言葉を聞いた途端、僕の震えが止まった。
「あの日に起こったのは良い事じゃなかったね。でも、あれは事故だったんだよ。ごめんね、お兄ちゃんのせいじゃないって、ずっと謝りたかった」
「何だって……?」
少女から体を引き離し、改めてその顔をまじまじと見る。
「まさか……美希?」
けれども、その顔は美希とは似ても似つかない。
どちらかと言うとこの顔は……
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