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きっかけは全くの偶然だった。
百貨店で拾った鞄。
後ろめたさを感じつつ、それを開き、中にあった免許証を見て、その鞄の持ち主が「村上美咲」であることを知った。
「村上」も「美咲」も珍しい名前ではない。
しかし生年まで妹と同じとなると、もう私はこの「村上美咲」が妹を死に追いやった女であると信じた。
免許証から美咲の住所を得て、鞄の中にあったスマホに登録されている情報を控えた。
そして鞄は百貨店のサービスカウンターに預けた。
それから私の復讐は始まった。
私は雑誌の記者だ。
常に芸能人を見張っている。
それと同じように、暫く美咲を見張った。
そして彼女の勤務先や生活パターン、交友関係も把握し、綿密に作戦を立てた。
殺したいほど憎い相手だったが、あんな女の為に私の一生を台無しにする気はなかった。
なるべく大きな罪にならないように、彼女を追い詰める。
あの女が苦しめばそれで良いと思った。
そこで思いついたのが【転生】だった。
私が美咲の生まれ変わりの振りをし、いくつかの未来を予見し、「むごたらしい死を迎える」と言えば、恐怖に震えるだろうと思ったのだ。
無論、私に予知能力などない。
全てトリックだ。
私はあの前日の夜に美咲の部屋へ忍び込み、目に付いた腕時計を隠し、玄関に小型のオーディオを置いたた。
それだけだ。
何も盗ってはいないし、彼女には指一本触れていない。
適用される罪は、精々【不法侵入】ぐらいだろう。
未来のニュースなど、もっと単純だ。
繰り返すが私は雑誌の記者だ。
だから、いつどんなニュースが流れるかは事前に知ることが出来る。
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