昼海のビー玉

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祭りはだんだん賑わいを、灯りをなくしていき静かになり始めていた。 コンはなかなか戻ってこない。 おれはさっきまでコンが座っていた黒岩に腰掛けた。 海と預かった金魚とを眺めながらふと思う。 なにをしてるんだ、自分は。 見知らぬ面男に話しかけられるまま行動して、まるで元から友達だったみたいだ。 いきなり話しかけてきたコンにも驚いたが、なにより自分に驚いていた。 わざわざビーチサンダルを買ってきたり、金魚すくいをさせたり、、、。 挙句、コンの金魚を持ちながら、目的のわからない旅に出たコンを1人待ち惚けてる。 いい加減、帰ってしまおうかと考え始めた頃、消えかけた灯の中からコンが出てきて、こちらへ歩いてくるのが見えた。 「お待たせ、帰っちゃってなくて良かった。」 そう言って握り拳を差し出してきたので、反射的におれは掌を上に向けてコンの拳の下に出す。 「サンダルと、金魚すくいと、今日会えたことへのささやかすぎるお礼だよ。」 掌に落ちてきたのは、肌より少し熱い、きらきらしたビー玉みたいな宝石だった。 「これ、もしかして。」 「うん、さっきまであおいが飲んでたラムネの瓶に入ってたやつ。ちょっと使わせてもらったよ。たくさん光を飲み込んでるから、もっときらきらしてさっきよりも昼間の海みたいでしょう。」 本当に、コンのいう通り明るい海面のようだった。 さっきまでラムネ瓶の中で転がっていたビー玉と同じものとは思えない。
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