金魚すくい

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「らっしゃい。にいちゃん達仲良いな、兄弟かい?」 コンの腕を引いていたからか、野太い声でいきなりこんなことを聞かれた。 大きな水槽の向こう側には、浅黒い顔に白い手ぬぐいを頭に巻いた“いかにも”なおじさんがどっしりと座っている。 「はは、まぁ友人です。」 少しぎこちなかったかもしれない。 ちょうど前のお客が掬った金魚の入ったビニール巾着を、嬉しそうに持って屋台を離れていくところだった。 「1回200円。」 おれが100円玉を2枚渡すのと同時にほい、と蛍光ピンクの縁をしたぽいとプラスチックの椀を手渡された。 それをそのままコンに持たせる。 「これが、“ぽい”。これを使って好きな金魚を掬ってみな。」 コンは促されるままぽいと椀を持ち、しばらくおれの顔をじっと見つめてから、目の前の水槽に目を落とした。 水槽を見つめてからも暫くは動かず、痺れを切らしたのか屋台主が話しかけてくる。 「面のにいちゃんは金魚すくい、はじめてか?面つけたままだと見にくくねぇか?」 それに対してコンは少しだけ顔を上げて短く答えた。 「はじめてです。面は良く見えるので大丈夫ですよ。」 「そうかい。気に入った金魚はいたか?」 「うーん、、、。あの小さくて動きがゆっくりの子ですかね。」 そう言ってコンが指差したのは、群れから少し離れて1匹で静かに泳いでいる、小さめの綺麗な朱赤をした金魚だった。 「おぉ、すくいやすそうなやつじゃないか?」 「だね。届きやすい位置にいるしいいじゃん。コン、思い切りが大事だぞ。」 2人に押されてコンはようやくぽいをしっかり握り、前のめりの姿勢をとった。
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