2353人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
クスクスと笑って、都琴が聡乃へと身体を近づける。
ベッドのスプリングが音を立てて、そして聡乃の唇に軽い口づけをした。
「……!」
その、あまりに甘酸っぱく、あまりに予想外なキスに、聡乃が目を丸くすると、
「ほら、そういうところ。とっても可愛いです」
「!!!」
そう言ってにっこりと、目尻を下げる。
当然ながら、突然恥ずかしさに火がついた聡乃は、真っ赤になって口元を押さえた。
「さっ、斎藤くんって、そういう人……!?」
「そういう、とは?」
「普段、笑った顔なんて見たことないよ!? そんな風に笑う人なの!?」
さっきから何回も!
甘くて優しい笑みを零している。
「……そうですか? 結構笑ってるつもりですが」
目を丸くする都琴に、聡乃は全力で首を振った。
「んー……なんだろ、聡乃さんを前にすると勝手に緩んでしまうのかもしれないですね。聡乃さんが可愛すぎるんで」
ぞわわっと背筋が強張った。
身体を抱きしめ、都琴に言う。
「それ、やめて!」
「どれですか?」
「可愛いって言う、それ!!」
叫ぶとまた、笑う。
こんなに簡単に微笑む人だとは思わなかった。
ぞわぞわする聡乃とはちぐはぐに、微笑む目の前の男は、どうやら本気でそんなことを言っているらしい。
最初のコメントを投稿しよう!