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だけどそれに、聡乃は気づいていない。
可愛いという言葉に、相当な抵抗を見せたところを見ると、もしかしたら可愛いという言葉は、聡乃の中では言われたくないものなのかもしれない。
都琴は、小さく思い悩んだ。
せっかくここまで来れたのに、このチャンスを棒に振るうようなミスはしたくない。
(せっかくここまで来られたのに……)
仕事以外の話をできるようになるまで4ヶ月、飲み会の席で隣の席に座れるようになるまでまた数ヶ月、仕事帰りに食事に誘えるようになるまで、また数ヶ月……。
よくよく考えると、聡乃に好意を抱いてから、既に1年以上は経っている。
だけど、聡乃の態度から察するに、本当に気づかれていなかったし、言うなら男として見てもらえてさえいなかった。
都琴は思案した。
少しでも長く聡乃のそばにいられる方法。
そして、聡乃を捕まえる方法。
だけどもちろん、そんなことは、当の本人は気づいているはずもなく。
また、今夜も……。
「おい斎藤、ほんとにお前は、どういうことなんだよ……っ」
隣で聡乃がクダを巻いている。
お酒に呑まれている。
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