第三夜

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(ああ、自己嫌悪……) 気怠い腰を持ち上げ、いつものように朝風呂に入り、家の中とは裏腹にバッチリ決めて会社に出向いた。 仕事はできる、要らない口出しもしてくる、男勝りのスパキャリ。 だけど実際は、絵に描いたようなズボラ女子。 家に呼ぶことなんぞあったら、さすがの都琴だって、夢から醒めてしまうに違いない。 (そう、そうだよ。斎藤くんは夢を見てるだけ……) 会社で見る聡乃と、リアルの聡乃は全く違う。 そんなことを思いながら、重い気持ちでオフィスのドアを開けた。 乱雑に積み重なった書類の山が、いくつものデスクの上に跨っている。 「おはようございまーす」 いつもの通り、力の篭らない声で挨拶をすると、 「山本くん、ちょっと」 嫌味で影の薄い上司の大田が、聡乃に向かって陰湿な手招きをした。
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