第三夜

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「斉藤くん! 望都さんの件、兄弟の特権使って、近日中に取材時間を取り付けて!」 自分のデスクに戻るなり、半ば八つ当たりするように、すでに出社していた都琴に告げた。 「どうしたんですか。また太田編集長に何か言われましたか」 パソコンと向き合いながら、こちらを振り返ることなく言う。 まただ。 望都さんが絡むと、途端に子どもっぽくなる。 「あのねぇ、これは仕事っ」 「浮かれているのは聡乃さんだと思いますが」 「――!」 確かに。 望都さん以外の取材のことであんな催促をされようものなら、太田を殴っていた。……確実に。 「そ、それは……っ、やっぱり今をときめく超人気デザイナーだし、単純に興味っていうか、会ってみたいっていうか……」 「……聡乃さんの好みですもんね」 「その言い方っ!」 キッと目くじらを立てる。 それでも都琴はひょうひょうとしている。
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