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「……それじゃ、困る人がいるんですよ」
もちろんそれが誰とは言わないが、この人にはもう少し、自分が与える影響の大きさを自覚してもらうしかない。
「その人は今日も朝から編集部長に叱られてて……」
『例の美人な上司ちゃん?』
「……、」
にかっ、と。
電話越しにその表情が弾けたのが分かった。
「美人、ではないですね」
『でもお前は好きなんでしょ?』
一言もそんなこと言っていないのに、どういう兄の嗅覚か、ズバリと言い当てられる。
もちろんそれに正直に答えるつもりはない。
「違いますよ、ただの上司です」
『じゃ、その子に取材取らせるならオッケー』
望都が言った。
「……俺も行きますが」
『ダメダメ。二人きりがいい。その子、お酒飲める? お酒好きなら是非飲みながら、』
「これは仕事です! 俺も同席するんで、ちゃんと真剣に応えてくださいっ!」
半ば強引に電話を切り、日時の指定をしなかったことに、舌打ちしたい気持ちを隠せない。
するとすぐさま、望都から連絡がきた。
[今夜8時、ナイトホテルで]
最後に付けられたスタンプが、こちらの気持ちを全て見透かしているようで、また、イラっとした。
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